Reproで3年半デザイナーとして働き、ついにブランドガイドラインの初版を作ることができました。会社に人が増えれば増えるほどガイドラインの必要性が大きくなるためです。

もし、永続的なブランドを作るということが、ガイドラインを作成し全員がそれに従うことだと思っているのなら、それは間違いです。ブランドは知ってもらうためだけでなく、信頼してもらうためにも必要だからです。

ガイドラインを作る前は、ガイドラインの必要性について社内で議題にあがることこそありませんでしたが、全従業員に理解してもらえるガイドラインが必要であるという共通認識はありました。

そこで、私は「コッターの8段階変革プロセス」を参考に、ガイドラインを作り始めることにしました。

ジョンコッターはハーバード大学ビジネススクールの教授で、変革のエキスパートとして有名です。著書の一つである、「変革するリーダーシップ」では、変革を経験した100もの組織を調査し、発見した8段階の変革プロセスを紹介しています。今回はこの8段階の変革プロセスをどのように行ったのかをご紹介します。

ステップ1:危機意識を高める

ブランドガイドラインを作成する以前、プロジェクトの多くがブランドイメージに則しておらず、それらによってブランドイメージそのものが低下していることを理解してもらうことが重要でした。現状を正しく理解してもらうためにブランドイメージの低下が予測されるたびに、その原因を発見し、議論しました。

私は、ベンダーとの行き違いや、マーケティングチームやデザインチームからブランドに則していない色の仕様などが原因で生じた問題を整理することで、ブランドのアイデンティティを統合する必要があることを経営陣に提示しました。

ステップ2:変革を推進する強力なチームを作る

つまり、共通の目標に向かって動くチームを作るということです。

今回の場合は、プロジェクト関係者と、企業のブランドについてより多くの議論を行い、目標にコミットしてもらうことを意味します。

私はほとんどの経営陣と、ブランドや取るべきアクション、そしてそれがどのように役立つのかを話し合いました。

また、他チームの責任者とアイデアベースでの議論も行いました。

プロジェクト関係者の中には変革に前向きでない人が必ずといっていいほど存在することでしょう。特にそういった人には、変革を行うメリットを説明する必要があります。ブランディングのような抽象的なプロジェクトの場合、データを提示することは難しいので、理想やビジョンに基づいたコミットを確立することが重要です。

一番大変だったのは、全デザイナーを集めたデザインチームを作成し、チームとしてこのプロジェクトを推進すること、そしてメンバーの声を可視化することでした。

ステップ3:ビジョンと戦略を明確にする

これには、デザインチームに適切な人を採用する目的も含まれていました。

また、ガイドラインを企業から発信するものすべてに適応させるため、ガイドラインの利用手順も作成しました。

このようなガイドラインは社員のアウトプットにも影響します。

ステップ4:ビジョンを周知徹底する

ブランドのガイドラインを発表するのとは別に、どんな細かいタスクを行う時でも大きい画像をアウトプットに含めるようにしました。依頼者に私たちが今どんなビジョンを持っているのか、デザインをするときに多少の自由が制限されたとしても、そのガイドラインを守る必要がなぜあるのかを共有しました。

また、デザイナーがデザイン関連のトピックや現在行っているタスクについてどこで共有するのかを明確にすることをOKRsに含め、会社全体の意識を高めました。

ステップ5:障害を取り除く

今回のプロジェクトで一番大変だったのはブランドのガイドラインが、特に手間ひまかけなくても遵守されるためのワークフローを作らなくてはならなかったことです。ガイドラインを企業全体に定着させたかったため、まず先にチーム間でのワークフローを確立させました。

例えば、デザインチームへの依頼方法をわかりやすくしたり、ガイドラインを定着させるにあたって起こりうる課題を解決するためにマーケティングチームとの定期的なミーティングを行ったりしました。また、席の配置をコーポレートチームとマーケティングチームの間に変えることで、コミュニケーションがスムーズに行えるようにしました。

ステップ6:短期的成果を実現する

最終的な目標は素晴らしいブランドのアイデンティティを完璧に実行できる状態にすることですが、それには時間がかかってしまいます。そこで、短期的成果をブランドのガイドラインが他人の助けがなくても遵守される状態を保つこととしました。

そのために、従業員のIDカード作成やポートレートの撮影などの細かいデザイン変更プロジェクトを行うことで、現場の課題を洗い出し、プロジェクトを行う速度を徐々に高めました。

リブランディングプロジェクトを行うためには、ほとんどのチームの仕事を増やすことになってしまい、企業にとっては大きな投資になります。可能であれば、最初は小さい規模で始めるのがいいでしょう。

ステップ7:変革を推進する

すでにあるシステムが定着している場合、多くの変革は定着しません。

変革は続けることで定着します。新しいガイドラインはデザインの基準を底上げし、将来のプロジェクトにもうまく適合しなくてはなりません。

私たちの企業で目標を設定する方法であるOKRとは別に、デザインチームではKPT (Keep Problem Try) という振り返り法を採用し、毎週うまくいったことといかなかったことを明確にしています。

また、定期的に他企業のデザイナーと話す機会を設けることでアイデアが新鮮なままプロジェクトを推進できるようにしています。

ステップ8:新しい方法を企業文化に定着させる

変革をうまく定着させるには、変革が企業と一体である必要があります。つまり、マーケティングチームやデザインチームだけでなく、すべての従業員にガイドラインを正しく遵守してもらう必要があります。

すべてのチームから変革が確認できて、企業の経営陣がいつでもその変革を行えるように、以下のことを行いました。

  • CEOと定期的なミーティングを行い、ブランドの位置づけと方向性について話し合う
  • 新規従業員の採用およびオンボーディング内に企業の理想と価値観を含める
  • 変革を行い続けるリーダーとしてデザイナーのスペシャリストを紹介する計画を立てる

最後に

これが組織レベルでのデザイン変革を行う、8つのステップになります。企業の大きさや方向性によってそれぞれのステップにかかる時間が変わったり、不要なステップが出てくるかもしれません。

組織にうまく変革を起こすには、多くの作業と綿密な計画が必要です。そして、その変革が定着するまで待つことで成功する可能性が高まるでしょう。上記のステップをすべて行うことで、変革を成功させる可能性が大幅に向上します。

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著者について
Alex Kwa

UXデザイン、Repro
Repro創設時からデザイナーとして従事。
ディーター・ラムス、吉岡徳仁と深澤直人を敬愛している。
ストリートブランドSupremeをこよなく愛するノマドワーカー。
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