多くのデザイナーは、コスト削減などのビジネス面における要素が、プロジェクトに大きな影響を与えていることにストレスを感じているでしょう。もちろん、経営者もデザインが重要であるということは理解していると思います。しかし、ここで問題なのはデザインが「どのくらい」重要なのか、ということです。どれだけお金になるかという観点で意思決定が行われる現在の世の中において、優れたデザインとビジネス価値との関連性を立証することは難しいでしょう。

この問題を解決するため、2018年10月、『マイクロソフト』による資金提供を受けた『マッキンゼー・アンド・カンパニー』は、ビジネス価値を引き出すためのデザイン施策とはどういったものか、膨大なリサーチを行いました。5年間にわたって上場企業300社を調査し、収集した200万件を超える財務データと、10万件を超えるデザイン施策を比較したのです。さらに、先任のビジネスリーダーやデザインリーダーにインタビューを行いました。その結果、金銭的に最も大きな影響を与えた12のデザイン施策を発見し、それを4つのテーマに分類しました。

そして、定量的にデザインを測定する方法として、企業におけるデザインの強さと金銭的なパフォーマンスとの関連性を評価するMcKinsey Design Index(MDI)を作成しました。

出典: McKinsey & Company

結論はとてもシンプルです。研究対象となった3つの産業(医療技術、コンシューマー・グッズ、リテールバンキング)のどの分野においても、MDIで上位4分の1に位置している企業は、業界のグロースにおけるベンチマークを約2倍も上回っていることがわかりました。つまり、企業が商品を扱っているか、デジタルプロダクトやデジタルサービスを扱っているかに関わらず、優れたデザインは重要であるということです。

これは同時に、デザインが優れたものであれば、企業の収益の向上につながることも意味しています。実際、TRSと収益における第4四分位、第3四分位、第2四分位の差はわずかであることが分かっており、デザイン性が高く優れている企業に対してマーケットは十二分に報酬を与えたと言えるでしょう。

このようなトップレベルの研究において最も難しいことが、この研究結果を実際に組織に適用させることです。MDIのベースとなる4つのテーマをもとに、組織が取るべき4つの対策をご紹介します。

出典: McKinsey & Company

デザインの分析

MDIでトップの企業は収益やコストと同じレベルでデザインのパフォーマンスを追跡しています。経済的利益の大きい企業では、企業のトップが掲げるビジョンに沿ったデザインを実現しており、デザイナーはビジネスのリーダーシップを保持しています。つまり、デザインはビジネスにおいて他の全ての要素と同等な位置を占めているということです。

これらのトップ企業の経営陣は、デザイナー自身が望むものに加えて、ユーザーが必要としているものも理解しています。

エンドツーエンドのUX

トップ企業では、プロダクトデザイン、物理的デザイン、デジタルデザイン、サービスデザインすべてのUXにおいて連携し、統一性を図っています。UXは、単純なインターフェイスではなく、エンドツーエンドのエクスペリエンスであると認識すべきでしょう。

例えば、『Repro』のカスタマージャーニーは、イベントを開催することで『Repro』のツールについて知ってもらい、有料のクライアントになってもらう。そしてツールを使ってクライアントのビジネスを成長することに始まります。

カスタマージャーニーには、さまざまな問題点やボトルネックとなる原因が潜んでいます。これを実現するには、有力なカスタマーインサイトを各プロダクトにおける設計の基盤とする必要があります。カスタマーインサイトを基盤とするべきであるにも関わらず、調査した企業のうち、最初のデザインのアイデアや仕様を作成する前にユーザーリサーチを行った企業は、約50%に過ぎなかったのです。


全体の責任としてのユーザー設計

調査によって、デザインを単なる部署としてだけでなく、それ以上のものとして扱うことは非常に価値があることがわかりました。

これらの相関関係は、トップの金融パフォーマーや企業が、機能的なサイロを分解し、デザイナーを他の機能と統合することができると述べていることからも明らかでしょう。つまり、これはデザイナーが最終的な後付けとしての役割ではなく、すべてのプロセスにおいて必要不可欠なものであるということを意味します。

「T型人材」と呼ばれる、デザインの奥深さに精通しつつも機能に沿って作業を行うことができるハイブリッドデザイナーは、ビジネスに最も大きな影響を与えることができる人材となるでしょう。

こういった人材を育成するには、まずデザインの才能を育てる必要があります。調査によると、デザインにおいて上位4分の1に属する企業では、他の企業と比べて約3倍の確率で、ユーザー満足度や主要な賞など、デザインの成果によって報酬を与えたり、デザイナーのための特別なインセンティブプログラムを実施したりしていることがわかりました。さらに、デザインを行うにあたって適切なツール、機能、そしてインフラストラクチャーなども提供しています。

このようなことから、McKinseyは、成功したビジネスと企業においては、研究、プロトタイピング、そして企業の概念生成の部分に十分な労力と資金を注いでいるという事実を見出しました。

継続的なイテレーション

多くの人が、天才的なデザイナーとは、デザインに何日も何ヶ月も費やした末に、ようやく最終的な傑作を完成させるというイメージを持っていると思います。しかしながら、調査によると、最高の結果を出しているのは、テストし、分析して修正するという作業を繰りかえし行なっている企業であることがわかっています。

トップ企業はこれを理解しており、まずはアイデアを試し、失敗することから学ぶということを率先して行なっています。定性的なユーザーリサーチと定量的なユーザーリサーチをどちらも行うことで、最高の結果を得ることができるのです。例えば、医療技術の企業が、物理的人間工学についておもちゃのデザイナーと話したり、デバイスを使いやすく安全なものにするだけでなく、ローンチの際に市場で他の競合に打ち勝つために、デートアプリのデザイナーとデジタルインターフェイスについて話したりすることが挙げられます。

始めるにあたって

McKinseyは、4つのテーマを実行に移すために、次に製作予定の製品もしくは機能を1つ選ぶことを推奨しています。今回ご紹介したMcKinsey Design Index(MDI)は、小規模から始め、早く学び、さらに企業に合わせて適切に拡大縮小することができるため、組織レベルの変更に向けた取り組みを強化するのに役立ちます。

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著者について
Alex Kwa

デザインマネージャー、Repro
Repro創設時からデザイナーとして従事。
ディーター・ラムス、吉岡徳仁と深澤直人を敬愛している。
ストリートブランドSupremeをこよなく愛するノマドワーカー。